平成23年度2月作成(毎月1個更新目標!!)
○金封(のし袋)について
■はじめに
さて、今回は、特に世代交代した檀信徒の方々からよく質問を受ける「金封の書き方、水引の色の選び方」について説明していこうと思います。では、まず金封、特にのし袋について説明していきます。
■のし袋
まず、一般にお金を入れる袋が「金封」です。そして、その中で、「のし(熨斗)」の付いた物がのし袋(通常、下に述べる赤白水引とセット)です。したがって、「のし」が付いていない袋をのし袋というのは間違いなのですが、「のし」の有無に関わらず、一般に「金封」のことを「のし袋」と呼んでしまっています。金封の中には、水引もない白無地の物もありますが、これすら「のし袋」と呼んでしまっています。
では、そもそも「のし」とは何なのでしょうか(上の写真の右上にある物)。のし(熨斗)とは、正式には熨斗鮑(のしあわび)と呼ばれるもので、乾燥させたアワビを用いて作られます。アワビの肉を薄く削った後、何度も干す→竹筒で押して伸ばす→水に浸ける→干す…を繰り返して作られます。ここから、「のし」は「延ばす」で、長寿をもたらすとされたため昔から縁起物とされきました。現在では、本物の「のし(熨斗)」の代わりに黄色い紙が用いられています。さらに簡略化し、金封の表面に印刷されていることもあります。
縁起物ですので、結婚祝いなどの「御祝」や感謝の気持ちで渡す「御礼」には、「のし」の付いた(通常、下に述べる赤白水引とセット)金封を用いるのですが、仏事には(お寺に対しては)、「御祝」や「御礼」の時でも「のし」を使わない方がいいとされています。それは、「のし」は、上に述べましたように、元々「アワビ」から出来た生臭い物であるからです。とはいえ、現在、市販されている赤白水引付きの金封にはほとんど「のし」も付いており、「のし」なしの金封を用意するのは大変です。そのため、現在では、本物のアワビから作られた「のし」を手にすることも少なく、紙または印刷であることがほとんどですので、縁起物ということだけに視点をあてて、「のし」付きの金封を用いてもよいと思います。厳格に考えるならば、白無地の金封を用いることになるのですが。
また、仏事に関係なく、その性格上「のし」は黄白や黒白の水引とはセットになりません。
■水引(みずひき)
続きまして、金封に結ばれている飾り紐、水引について説明していきます。
○結び方
(1)結び切り
一度結ぶとほどけないことから、「一度きりにしておきたい」という意味を込めて使われます。
水引の色を変えることで、慶弔ともに用いることができます。ex.御香典、結婚祝
「結び切り」の一種の(2)「あわじ結び」と区別して「真結び」ともいいます。
《写真は、黄白水引(印刷)の結び切り》
(2)あわじ結び
両端を持って引っ張るとさらに強く結ばれることから、「末永いお付き合いを」という意味を込めて使われます。
水引の色を変えることで、慶弔ともに用いることができます。
(1)「結び切り」や(3)「蝶結び」と違い、「一度きりにしておきたいこと」、「何度あっても良いこと」どちらにも使えます。
(1)「結び切り」の一種で、「あわび結び」ともいいます。
《写真は、黄白水引のあわじ結び》
(3)蝶結び
何度でもほどいて結び直せることから、「何度あっても良い」という意味を込めて使われます。
したがって、弔事には使われず、結婚以外の慶事に使われます。
《写真は、のし付き赤白水引(印刷)の蝶結び》
○色の区別
(1)赤白(一般に紅白とも呼ばれていますが、本来の紅白の水引は皇室の祝い事にのみ用いられる濃い緑色の水引を指します。)、金銀(主に結婚祝い)
…慶事一般に用いられます。渡す側の「祝い」、「喜び」の気持ちを特別表すときに使われます。
(2)黒白、黒銀、双銀
…弔事一般に用いられます。渡す側の「悲しみ」、「悼み」の気持ちを特別表すときに使われます。
《写真は、黒白水引のあわじ結び》
(3)黄白
…「喜び」や「悲しみ」といった気持ちを特別には込めない場合、広く一般的に、特に仏事で用いられます。
■表書き
最後に、表書きの違いによる金封の種類と水引の結び方、色について(主に仏事に関することについて)具体的に説明していきます。(上記の説明の通り、仏事ですので基本的に「のし」は付きません。)
○檀信徒の方からお寺、お坊さんに対して
・御布施(御経料、御回向料は×)→白無地、結び切り・あわじ結び黄白または黒白(赤白もありえますが、目にしたことはありません)
…どのように書いてよいか分からない時など、どんな時に書いても問題ありません。
「布施」については、別のコラムで詳しく取り上げますが、御布施は「渡す場面、渡す相手方」に重きを置くのではなく、そういうものはひとまず置いといて(厳密に言うと大事なことなのですが)「渡す行為」そのものに重きを置きます。
「布施」とは渡す側の修行のことで、それは自らの「欲」を捨てる修行です。基本的に「場面や相手」を問わず、いつでもできる修行です。
我々お坊さんが、御経を唱えたり、拝んだりしているのも、法施という布施行をさせてもらっています。したがって、「御経を唱える 御布施を渡す」というのは、互いに布施行をしあっているという関係になります。自らの欲を捨てる布施行をしている者に対して、自らも布施行をしているという関係です。
御経唱えたからそれに対する対価として渡すという対価関係にはなりません。だから「料」という言葉を使うのはおかしいのです。「御布施」が少ないから半分拝んでおこうということにはならないですし、あんな「御経」では御布施を半分にしておこうということにはならないのです。対価関係にないから、互いのバランスは関係ないのです。
「お坊さんが」、「場面が」どうのこうのということに関係なく、自分がお寺、お坊さんに対して修行(布施行)を行うだけのことですので、「御布施」という表書きはどんな時に書いても問題ないのです。
・御法礼(禮)(ごほうれい)→白無地、結び切り・あわじ結び黄白または黒白または赤白(赤白は仏前結婚式などでお坊さんに対して)
…お坊さんに対する御礼、拝んで下さってありがとうございましたという感じのニュアンスが含まれますので、渡す相手、場面を意識することになりますが、基本的には「御布施」と同じように考えて頂いて構いません。「葬儀」や「年忌」などのいつもよりも厳粛な法要の際は、比較的こちらを用いられることが多いです。
・御礼(おんれい)→白無地、あわじ結び黄白または赤白(赤白は仏壇・墓石の開眼などで)
…場面に応じた感謝の気持ちを表します。御法礼よりも広い場面で使えます。
・御供(おそなえ)、御法(宝)前(ごほうぜん)→白無地、あわじ結び黄白または赤白(赤白は目的の寺院に参拝できて感激したときなどに)
…寺院に参拝する際、祀られている御本尊(仏様など)に対してお供えするときに用います。
・御車料、粗飯料→白無地
…交通費と食事代のことですので、まさに「料」という言葉を用います。
○年忌や逮夜法要(親戚や知人に対して)
・御霊前(ごれいぜん)→通夜・葬儀の時のみ結び切り黒白、逮夜法要は結び切り黄白(上記説明の通り、あわじ結びでも可)
…七七日忌(満中陰忌)までのお供えとして(お葬式の流れについては別のコラムで説明します。)。
・御仏前(ごぶつぜん)→結びきり黄白(上記説明の通り、あわじ結びでも可)
…百ヶ日忌以降、年忌などのお供えとして。
・御供(おそなえ)→通夜・葬儀の時のみ結び切り黒白、それ以外は結び切り黄白(上記説明の通り、あわじ結びでも可)
…まさにお供えですのでいつでも使えますが、どう書くべきか分かっているときは、「御霊前」や「御仏前」を書くようにしましょう。
・御香典(奠)(ごこうでん)→通夜・葬儀時に結び切り黒白(上記説明の通り、あわじ結びでも可)
…死者の霊に対する「香(線香など)」のお供えの代わりにする金品のお供えとして。
○その他
・寸志(すんし)→白無地、あわじ結び赤白
…少しばかりの気持ち。自分の志をへりくだって相手に渡すとき。ちょっとした感謝の気持ちを表したりお願いをしたりする時に使われます。
・上→白無地(水引は場面に応じてどれでもありえますが、水引を使うようなかしこまった場面ではあまり見かけません。)
…場面としては寸志のようにちょっとした気持ちを表すときに使用します。相手を上げることで自分を下げます。目上の人に対してだけ使えます。かしこまった場面では使いません。
■まとめ(仏事、お寺に対しての書き方のまとめ)
具体的に書きすぎて少し見づらくなってしまいましたので整理しておきます。
考え方としては、まず、どのような場面で誰に渡すかを考え、表書きを決定します。
次に、その場面が渡す側にとって「一度きりにしておきたいこと」かどうかを考え、結び方を決定します。はっきりとどちらか選びにくいときは、あわじ結びが無難です。
最後に、相手に対して渡す側のどのような気持ちを伝えるのかを考え、水引の色を決定します。
大体このような流れで考えていけば、大きな間違いはないと思います。
(注1)宗派によっても、地域によっても違いがあるようですので、参考程度にご覧下さい。
(注2)一応調べて書いておりますが、万一問題等ありましたら連絡して頂ければ幸いです。
※参考にさせていただいた本です。
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↑画像をクリックすると"のし袋"に関するリンクに飛びます。
○日蓮宗について
○お坊さんの呼び方
○お線香のあげ方
○お数珠について①
○お数珠について②
○お数珠について③
○御札の祀り方
○金封(のし袋)について
○「祈り」について
○花の供養について
○お灯明について
○お経本のご紹介
○大立寺のお盆①
○大立寺のお盆②
○「お膳」について
○塔婆について
○木魚と木鉦
○お仏壇について①
○お仏壇について②
○お墓について①
○お墓について②
○布施について
○お経とは
○インド仏跡参拝紀行文(1)
○インド仏跡参拝紀行文(2)
○インド仏跡参拝紀行文(3)
○インド仏跡参拝紀行文(4)
○インド仏跡参拝紀行文(5)
○インド仏跡参拝紀行文(6)
○インド仏跡参拝紀行文(7)
○インド仏跡参拝紀行文(8)
○インド仏跡参拝紀行文(9)
○インド仏跡参拝の旅
まとめ動画
○東日本大震災第三回忌に臨んで(前編)
○東日本大震災第三回忌に臨んで(後編)
長唱山大立寺(だいりゅうじ)
〒607-8008 京都市山科区安朱東海道町56 詳しくはこちら