平成25年2月作成
○お墓について②
■はじめに
前回のコラムに引き続き、お墓にまつわる事柄を、今回は写真を多めにして説明していきます。
次のような流れで説明しています。①から⑥までは、コラム「お墓について①」に掲載しています。まだそちらをお読みでない方は、まずそちらからご覧頂くことをお勧めします。なお、少々長いと思いますので、とりあえず「②お墓の意義」と「③お墓の形、刻む文字」に目を通して頂きますと、今回のコラムも読みやすくなると思います。
今回は、「⑦お墓の構成」と「⑧お墓参り」を掲載しています。
①お墓の歴史
②お墓の意義
③お墓の形、刻む文字
④お墓の種類
⑤お墓を建てる
⑥納骨
⑦お墓の構成
⑧お墓参り
⑦お墓の構成
・墓石
「五輪塔」「角柱墓」などが一般的です。自然石にそのまま文字を刻んだお墓もあります。
また、前回のコラム③の説明の通り、「板塔婆」や「角塔婆」を建てられている場合もあります。
正面には、「南無妙法蓮華経」「妙法 ○○家之墓」などと刻みます。側面か裏面には、建立年月日、建立者、法号(戒名)、命日(亡くなった年月日)などを刻みます。
・墓誌
先祖墓などで、埋葬者が増えてくると、墓石に法号などを刻めなくなってくるので、お墓の横などに立てておく物です。無いといけない物ではありません。必要に応じて用意して下さい。
法号の他に、命日、行年(亡くなった年齢)、俗名、続柄などを刻みます。
・花立て
墓石の前に一対備え付けます。現在では、墓石とセットで用意してもらえますが、昔の個人墓などでは、竹筒やそれを模したプラスチック製の花筒を立てていました。
墓石に「南無妙法蓮華経」とだけ刻む場合は、花立てに「○○家」と刻まれる場合が多いようです。
・水鉢
仏様、ご先祖様に水を供養するところです。直接墓石に窪みを掘る場合と、窪みを掘った石を墓石の前に設置する場合があります。どちらでも構いません。別に設置する場合は、その石に「家紋」を刻まれることが多いようです。
・線香立て
固定式の物と、置いておくだけの物があります。固定式の場合、燃え残ったお線香の掃除が大変ですので、回すと取り外せるタイプをお勧めします。
・ろうそく立て
様々なタイプのろうそく立てが販売されていますが、風よけの付いている物をお勧めします。風よけにもガラス製、プラスチック製、ステンレス製の物がありますが、ガラス製は割れているところもよく見かけますので、あまりお勧めできません。
写真のように灯籠型の物もあります。
風よけの無い場合は、ろうそくに、半紙を巻いてセロテープなどでグルグル巻きにしておくと、火が最後まで消えません。最近では、このようにした墓参用ろうそくも販売されています。
・大塔婆立て、水塔婆立て
大きな板塔婆を立てる塔婆立ては、墓石の後ろに設置します。水塔婆を立てる塔婆立ては、写真の場所に設置することが多いです。
大塔婆立て
水塔婆立て
両方とも、必ずしも用意しないといけない物ではありませんが、塔婆を立てておくために、有る方が良い物です。
塔婆の種類や立てる意義については、こちらをご覧下さい。
⑧お墓参り
ⅰ)持ち物
手桶(バケツ)、柄杓(ひしゃく)、掃除用具(手ほうき、塵取り、ゴミ袋、墓石洗い用のタオルやタワシなど)、お花、お線香、ろうそく、マッチ(ライター)、お供物(お菓子や果物)、お数珠など
ⅱ)作法
・寺院墓地の場合は、本堂のご本尊に対して合掌礼拝をします。
前回のコラム②「お墓の意義」でも説明しましたが、お墓は「お釈迦様のもとにいる故人、ご先祖様の成仏を祈る処」です。その根本をお祀りしている本堂の前でも、一度立ち止まって手を合わせましょう。
なお、このことは、お墓参りのときに限ったことではなく、お寺を訪れた際は、いつでも心を込めて手を合わせるようにして下さい。
・寺院もしくは管理事務所の方にも一言挨拶をしておきます。
・手を水で洗い清めてから、墓地に向かいます。
・墓前で一度礼拝してから、まず掃除を行います。
墓石のホコリを払って、落ち葉などのはき掃除をし、草抜きをします。墓石をきれいに洗い、タオルなどで水気を拭き取ります。水鉢、花立て、線香立てなどもきれいに掃除をします。
墓石を洗うときには、下の写真のような台所用のスポンジの使用をお勧めします。最近の墓石は、ツルツルに加工されていますので、この道具が一番よく汚れを落とします。
↑画像をクリックするとこのスポンジの購入ページに飛びます。
昔からあるザラザラした墓石の場合には、タワシを使ってもよいと思いますが、ツルツルした墓石の場合にはタワシは使わないで下さい。傷が付いて、水が入り、墓石が割れてしまうことがあります。
水鉢は、汚れが溜まりやすい部分ですので、落ち葉などを掻き出し、丁寧に掃除をしましょう。
花立ては、筒が取り外せるようになっている場合は、取り外して洗い、底の部分など指が入らないところには、歯ブラシを使うのがお勧めです。
線香立ても、取り外せる場合は、取り外して残ったお線香を掃除します。取り外せない場合は、爪楊枝やピンセットを用います。
・花立ての水を替えお花をお供えし、水鉢に水を注ぎます。
お花は、「生花」でも「しきみ」でも構いません。夏場は、「生花」だとすぐに枯れてしまいますので、「しきみ」の方がよいかもしれません。
水鉢に、一枚「しきみ」を浮かべることがあります。これは、もともと「しきみ」の持つ毒によるボウフラ避けのために行われていた風習でした。今では、仏様が水をすくう器のように浮かべられています。どちらの心持ちでも、仏様のことを思ってされている行いですので、浮かべて頂いて構いません。
・お供物(お菓子や果物)をお供えし、お線香を立てます。
お線香の本数に関しては、こちらをご覧下さい。
・お数珠を持って、一人ずつ墓石に水をかけ、合掌礼拝します。
お数珠の持ち方については、こちらをご覧下さい。
水は、墓石の頭からかけて頂いて構いません。仏様、ご先祖様の乾きを除くという意味で、お墓をお清めするという意味もあります。
合掌礼拝の後、読経・唱題されるのが一番望ましいですが、唱題(お題目をお唱えすること)して頂くだけでも構いません。仏様、ご先祖様に報恩感謝を告げ、日々の報告をし、故人の成仏を祈る気持ちを込めて、恭しくお唱えしましょう。
・お花、お線香、ろうそくはそのままでも構いませんが、お供物は
下げて帰りましょう。
お線香、ろうそくも、火の気が危ないと感じられる墓地では、消すか、無くなるまで待って帰るようにしましょう。
お供物を置いておくと、色々な動物がやって来て、お墓を荒らしてしまいますので、くれぐれも忘れないように注意しましょう。なお、お供物は、墓前で、ご先祖様と一緒に、召し上がって頂いても問題ありません。
ⅲ)タイミング
お盆、お正月、春秋のお彼岸には必ずお参りするように心懸けましょう。
故人の月命日(亡くなられたのと同じ日、毎月あります)、少なくとも祥月命日(亡くなられたのと同じ月日)にはお参りするようにしましょう。
また、入学や卒業、就職、結婚などの人生の節目に、その報告も兼ねてお参りするのもよいことです。
その他、機会があるごとにいつでもお参りして頂いて構いません。定期的に家族でお墓参りに行くことを習慣にしておくことも大切なことです。
※大事な機会に、どうしてもお墓参りが出来ないというときには、その
場で、故人に、ご先祖様に思いを巡らし、手を合わせて拝んで頂くだ
けでも構いません。
だからといって、くれぐれも「サボる」ことのないようにはしまし
ょう。仏様、ご先祖様から代々繋がってきた生命を感じ、「共にあ
る」ことを実感し、毎日をよく生きようと気持ち新たにするために
は、やはり、わざわざ足を運んで、お墓参りをすることに勝ることは
ありませんので。
■終わりに
以上、いつも通り、細かなことをたくさん書いてきましたが、何より大切なことは、仏様、ご先祖様を大切にする気持ちです。逆に、仏様、ご先祖様を大切に、今の自分も大切に、そして周りの人たち、これからの世代も大切に思える「心」を育むための「お墓参り」と言ってもよいかもしれません。
少々の細かいことが出来ていないからといって、バチが当たるというようなことはありません。しかし、「お墓とは何か」という根本的なことだけは、しっかり押さえておいて下さい。
まずは、お釈迦様への報恩感謝からということをお忘れなく。お墓参りだけして、本堂にお参りされない方をお見かけしますが、これでは、根本を忘れて、枝葉にだけ手を合わせていることになります。くれぐれもご注意下さい。
このコラムをご覧になった方々が、改めて「気持ち」を込めて、「心」からお寺参り、お墓参りに励んで下さることをお祈りしております。
※お墓に関しても、宗派による違い、地域による違いが相当にあるよう
です。そのことも考慮して、ある程度一般性を持たせて書いたつもり
ですが、万一問題等ありましたら連絡して頂ければ幸いです。
※参考にさせていただいた本です。
↑画像をクリックすると"Amazon"のリンクに飛びます。
↑画像をクリックすると"お墓掃除"に関するリンク
に飛びます。
○日蓮宗について
○お坊さんの呼び方
○お線香のあげ方
○お数珠について①
○お数珠について②
○お数珠について③
○御札の祀り方
○金封(のし袋)について
○「祈り」について
○花の供養について
○お灯明について
○お経本のご紹介
○大立寺のお盆①
○大立寺のお盆②
○「お膳」について
○塔婆について
○木魚と木鉦
○お仏壇について①
○お仏壇について②
○お墓について①
○お墓について②
○布施について
○お経とは
○インド仏跡参拝紀行文(1)
○インド仏跡参拝紀行文(2)
○インド仏跡参拝紀行文(3)
○インド仏跡参拝紀行文(4)
○インド仏跡参拝紀行文(5)
○インド仏跡参拝紀行文(6)
○インド仏跡参拝紀行文(7)
○インド仏跡参拝紀行文(8)
○インド仏跡参拝紀行文(9)
○インド仏跡参拝の旅
まとめ動画
○東日本大震災第三回忌に臨んで(前編)
○東日本大震災第三回忌に臨んで(後編)
長唱山大立寺(だいりゅうじ)
〒607-8008 京都市山科区安朱東海道町56 詳しくはこちら