平成24年度1月作成(毎月1個更新目標!!)
○お仏壇について②
■はじめに
今回も、前回と同様、お仏壇に関するコラムです。
今回は、前回の全般的な説明を踏まえて、お祀りの仕方など、具体的なことについて説明していきます。まだ前回のコラムを読まれていない方は、まずこちら「お仏壇について①」をご覧下さい。
■お仏壇に用意する物と祀り方
以下では、「京型」のお仏壇(左側写真)での祀り方を中心に説明していきます。なお、日蓮宗の推奨している置き方(右側図)とは、お仏壇の形が違いますので、異なります。
なお、まずその物の簡単な説明をし、その後で【コメント】として、その物の祀り方を説明していきます。写真はクリックすると拡大されます。
◇御本尊(ごほんぞん)
(厳密に説明し始めるとこれだけで一つのコラムができてしまいますので、ここでは端的に示していきます。)
①御曼荼羅(おまんだら)
久遠実成(くおんじつじょう)のお釈迦さまの「慈悲」と「智慧」の詰まった「法華経」というお経の世界観を、日蓮聖人自らが文字にして顕されたものです。「南無妙法蓮華経」というお題目を中心に、法華経に出てくる仏さま・菩薩さま、法華経の信仰者を守護する諸天善神などのお名前が記されています。
末世の衆生(私たち)が、お題目の光明(こうみょう)に照らされ救われている姿、世界観が示されています(詳しくは別コラムで)。
②日蓮聖人像
寒くなると下の写真のような「お綿」を被せます。このお綿の中央には、赤い綿が一すじ入っています。これは、日蓮聖人が小松原法難という法難に遭われケガをされた時の血がにじんだものと云われています。
お綿を被せておく時期は、御会式10月13日から立教開宗会4月28日までといわれていますが、大立寺では、寒くなる11月の御会式(関西は11月)から暖かくなる3月のお彼岸まで被せるようにしています。
③一塔両尊像
お題目の記された宝塔の左右に「お釈迦さま」と「多宝如来さま」がお座りになっている様子を表したお像です。
④鬼子母神さま・大黒天さまの掛け軸またはお像
鬼子母神さま(下写真右側)は子供を守る神様で、子孫繁栄や家内安全の神様です。大黒天さま(下写真左側)は、元々五穀豊穣(農業)の神様で、今では商売繁盛の神様でもあります。
【コメント】
これらは、お仏壇の最上段(須弥壇)の上方、宮殿(くうでん)にお祀りします。
①②③を中央の宮殿にお祀りし、④を下の写真のように両脇にお祀りします。
①は必ず必要です。写真のように①と②があると良いです。
宮殿のスペースに余裕があれば、③も用意して頂きたいです。なお、いつ頃のことかは定かではありませんが、①の代わりに、②と③だけをお祀りしていた時期があるようです。そのようなお仏壇も時々お見かけします。議論の余地がありますが、一応問題はないと思います(詳しくは別コラムで)。
これから新しくお仏壇を購入される場合は、少なくとも①だけはご用意下さい。
④も、実は議論の余地があるのですが、京都では、ほとんどのお仏壇でお祀りされています。
◇お位牌など
⑤お位牌(下左図)
ご先祖様の霊を象徴する木製の牌で、法号(戒名)などが記されています。ご先祖様自身とお考えになって頂いても構いません。形や色、大きさは様々ですが、お仏壇に合わせて作るようにしましょう。
⑥過去帳、過去帳台(下右図)
過去帳はご先祖様の名簿のような物で、各霊の法号(戒名)・俗名・命日(亡くなった日付)・行年(亡くなった年齢)・続柄などを記入します。
⑤
⑥
【コメント】
ご先祖様として、お祀りする物として⑤、⑥があります。
⑥に関しては、分家で初めてお仏壇を用意されたお家などご先祖様の少ないお家(お位牌だけで尽くせている場合)では用意しなくても構いません。なお、⑤を作らず⑥のみを大切にされる宗派もあるようですので、他宗の方は、菩提寺のお坊さんにご相談下さい。
⑤を、御本尊をお祀りする宮殿(最上段)に置かれているお仏壇をたまにお見かけしますが、これはいけません。最上段は、須弥壇であり、菩薩乗と言われたりもしますが、人より上の存在がお祀りされるところですので、下の写真のように、お位牌はその一段下の壇にお祀りしましょう。
お位牌が複数ある場合は、向かって右側が上座になりますので、「先祖代々」のお位牌や古い方のお位牌を右に新しい方のお位牌を左に置いて下さい。一つしかない場合は、右側に置いて下さい。
◇荘厳具(しょうごんぐ)
⑦瓔珞(ようらく)、灯篭(とうろう)、打敷(うちしき)など
お仏壇内部を美しくおごそかに飾る仏具です。
必ず用意しなければならないという物ではありません。デザイン的に家具調仏壇には取り付けられていないこともよくあります。
⑧三具足または五具足
花立て(花瓶)、お線香立て(香炉)、ロウソク立て(燭台)のことを指します。花立て、ロウソク立てを1対ずつ用意した物が五具足です。
これらは、仏さま、ご先祖様に供養する基本的な仏具ですので、必ず用意して下さい。
その意味など詳しくは各コラムを参照して下さい。
・花…………「花の供養について」
・お線香……「お線香のあげ方」
・ロウソク…「お灯明について」
⑨仏飯器、茶湯器、高坏(たかつき)、霊供膳(りょうぐぜん)
仏飯器はご飯を、茶湯器はお茶やお湯を、高坏はお菓子や果物をお供えするときに用いる仏具です。
霊供膳については、コラム「「お膳」について」を参照して下さい。
仏飯器と茶湯器は、上の写真のような物でなくても構いませんが、必ず何らかの容器を用意して下さい。
高坏(下の写真)と霊供膳はある方がいいものです。
【コメント】
⑦の瓔珞や灯籠は、毎日おロウソクを灯していると、どうしても「すす」で黒ずんでしまいます。これらは取り外して洗ってもらうことも、別途これだけを購入することも可能です。
打敷は、写真のように三具足の置かれている台の下に敷き、前に垂らします。四角形や三角形がありますが、日蓮宗では四角形を用いるのが正式です。
⑧は上の写真の位置に置くことになっていますが、お仏壇の大きさや安全性(火事の予防)を考え、下の方に並べて頂いてもよいと思います。
その場合も並べ方だけは注意しましょう。三具足の場合、左から花立て、お線香立て、ロウソク立ての順番です。五具足の場合は、中央からお線香立て、ロウソク立て1対、花立て1対です。
⑨のうち、仏飯器・茶湯器は上の写真のように置きます。1つずつしかない場合は、まず御本尊の前にお供えします。個数があれば、両脇の鬼子母神さまや大黒天さまにも1つずつお供え下さい。お仏壇の大きさによっては、両脇に1つずつは置くスペースが無い場合もありますが、その場合はご飯だけでもお供え頂ければと思います。
また、ご先祖様のお位牌だけにご飯とお茶をお供えされる方がおられますが、前回のコラムでも述べましたように、あくまでも御本尊あってのお仏壇ですので、まずは御本尊からお供えしましょう。そして、神様(鬼子母神さま、大黒天さま)へのお供えもし、スペース的にも数的にも余裕がありましたら、ご先祖様にもお供え下さい。
置き方は、向かって左に茶湯器、右に仏飯器です。これは、普段私たちがご飯を食べる時の逆です。すなわち御本尊から見ると正しい置き方である左にご飯・右にお茶となるように置きます。ただし、⑧もそうですが、仏飯器と茶湯器に関しては特に、こぼすとお仏壇の中が大変なことになりますので、危なくないように手前にお供え頂いても構いません。しかし、くれぐれもお供えしている対象を間違えないようにしましょう。容器が一つずつしかない場合でも、あくまでも御本尊にお供えしているという気持ちで手前にお供え下さい。
⑨の高坏は、上の写真の位置に置くか、その一段上(お位牌の一段下)に置いて下さい。お位牌が多い場合は、その段にもお位牌を置かれていることが多いので、写真のように置かれているのをよくお見かけします。
霊供膳は、毎日というのは大変ですが、年回(法事)・お盆・お彼岸・お正月にはご用意して頂きたいと思います。出来れば毎月一度、月命日にお供え頂けるとなお良いです。置く場所としては、お仏壇の最下部にある引き出し(上の写真矢印部)を出して置くのが一般的に思われます。
◇その他
⑩経机(きょうづくえ)
お経本を置くための、お仏壇の前に置く机です。
⑪お鈴(りん)、木魚または木鉦
お経をあげる時に用いる道具です。木魚や木鉦については、コラム「木魚と木鉦」を参照して下さい。
【コメント】
⑩には、お経本だけでなく、経机の大きさにもよりますが、安全性を考慮して⑧三具足を置くこともあります。
⑪のお鈴は、お仏壇に置くスペースが無い、またはそもそもお仏壇に置くよりも使いやすいという理由で、⑩経机の上に置かれる場合が多いです。
木魚や木鉦は、経机横の地べたに、「ふとん」など一枚挟んで置きます。
■その他
◇開眼(かいげん)法要
お経を供養することによって、ただの家具からお仏壇に、掛け軸から御本尊に、木像から仏像に、木札からお位牌にする法要です。お仏壇に仏さま達をお迎えするというイメージが分かりやすいかもしれません。
魂を宿らすということから、「入魂(にゅうこん)」と言ったり、「お正念(しょうねん)入れ」と言ったりもします。
新しく購入された場合は、開眼法要に伺いますので、お寺にご連絡下さい。また、この開眼法要はお仏壇一式を購入された場合に限らず、お位牌だけを新しく作られた場合にも行いますので、その場合もご連絡下さい。
また、お仏壇の開眼法要は、謂わば「仏さまの住居の新築祝い」のようなものなので、御祝い事とされ、御布施の金封には紅白の水引を用います。
※閉眼法要
逆に、お仏壇やお位牌を新しく作りかえるため処分したり、洗う(お仏壇や仏像、お位牌は洗ってもらうことが可能です。)ためや引越のために移動したりする場合は、閉眼法要が必要になります。
この法要は、「抜魂(ばっこん)」と言ったり、「お正念抜き」と言ったりします。
こういった場合も、お寺にご連絡下さい。
◇お仏壇を置く場所
家相的には、部屋の北西の角に置くのが良いとされています。家の建て方にもよりますので一概に言えませんが、私たちが北や西に向かって拝める所に置くということです。
置く方角に関しては、他にも色々な説(「本山のお寺がある方角に置く」「南面北座」など)があり、どれが正しいというものではないようですが、大立寺では、昔から「北西に置く」というように伝えられています。
どの方角に置くにしても、その場所は、風通しの良い、湿気の少ない、直射日光の当たらない場所であることが望ましく、常々掃除を心がけ、清潔な場所にしておきましょう。
また、「常々仏さまと、ご先祖様と共にある」という気持ちを育むためにも、あまり使用しない部屋などではなく、親しみやすい、毎日のお給仕のしやすい場所に置きましょう。仏間があれば仏間が良いです。
◇注意事項
イ)身内に不幸があった場合でも、お仏壇の扉を閉める必要はありません。
これに対し、神棚は半紙などで覆い隠します。これは、神様は「死」を嫌うとされているため「死」を見えなくする必要があるからです。しかし、仏さま自身は、「生老病死」を、「無常観」から、当たり前のものと捉え「死」を嫌われませんので、お仏壇の扉を閉めて見えないようにする必要はないのです。
ロ)仏壇屋さんに行く前に
お仏壇の大きさや種類は様々です。置く場所をあらかじめ決めて、どのようなお仏壇が部屋に合うかなどイメージを持って、行かれるとよいかもしれません。この際、置くスペースの幅、奥行き、高さを測っていくことをお勧めします。実際には、扉の開閉や掃除の関係で、予定スペースより一回りほど小さなお仏壇になるはずです。
※一応調べて書いておりますが、万一問題等ありましたら連絡して頂ければ幸いです。
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お数珠のコラムの時と同じく、今回の写真撮影にも、ご近所の「仏法堂」様に御協力して頂きました。
この場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。
ぶつだんの 仏法堂
〒607-8074
京都市山科区音羽乙出町1-14
電話:075-594-6781
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※参考にさせていただいた本です。
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○日蓮宗について
○お坊さんの呼び方
○お線香のあげ方
○お数珠について①
○お数珠について②
○お数珠について③
○御札の祀り方
○金封(のし袋)について
○「祈り」について
○花の供養について
○お灯明について
○お経本のご紹介
○大立寺のお盆①
○大立寺のお盆②
○「お膳」について
○塔婆について
○木魚と木鉦
○お仏壇について①
○お仏壇について②
○お墓について①
○お墓について②
○布施について
○お経とは
○インド仏跡参拝紀行文(1)
○インド仏跡参拝紀行文(2)
○インド仏跡参拝紀行文(3)
○インド仏跡参拝紀行文(4)
○インド仏跡参拝紀行文(5)
○インド仏跡参拝紀行文(6)
○インド仏跡参拝紀行文(7)
○インド仏跡参拝紀行文(8)
○インド仏跡参拝紀行文(9)
○インド仏跡参拝の旅
まとめ動画
○東日本大震災第三回忌に臨んで(前編)
○東日本大震災第三回忌に臨んで(後編)
長唱山大立寺(だいりゅうじ)
〒607-8008 京都市山科区安朱東海道町56 詳しくはこちら