平成25年1月作成
○お墓について①
■はじめに
今回のコラムでは、「お墓とは何か」ということをまず説明し、それからお墓にまつわる様々な事柄を取り上げていきたいと思います。
次のような流れで説明していきます。②は必ず読んで頂きたい項目ですが、その他は必要な箇所のみご覧頂いて構いません。なお、⑦「お墓の構成」、⑧「お墓参り」は次のコラム「お墓について②」に掲載しています。
①お墓の歴史
②お墓の意義
③お墓の形、刻む文字
④お墓の種類
⑤お墓を建てる
⑥納骨
⑦お墓の構成
⑧お墓参り
①お墓の歴史
もともとお墓は、ご遺体やご遺骨を埋葬したところに目印として、適当な石を置いておいたというのが始まりです。
それが、平安時代に、仏教の伝来とともに、インドから中国、朝鮮半島を経て入ってきた「塔を建てて供養する」という文化と習合していきます。
この「塔を建てて供養する」というのは、インドのお釈迦様のご遺骨(仏舎利)を、塔を建てて供養したことが起源になっています(詳しくは、コラム「塔婆について」の「起源と呼び方」をご覧下さい)。
日本に入ってきた頃から、支配階級の人々の間では、この仏教的な作法にならって、石塔が建てられるようになりました。そして、江戸時代になって、檀家制度が確立されていく中で、一般庶民も墓石を建てるようになったようです。
②お墓の意義
お墓は、上の墓石と下のご遺骨(ご遺体の時代もありました)から成っています。これは、お釈迦様を供養する石塔の下に、故人、ご先祖様が眠っているということです。
そして、仏教では、石塔自体を「お釈迦様」と捉えます(下の③でもう少し説明します)ので、「お釈迦様」の、「お釈迦様の世界」のもとに、故人、ご先祖様がいるということを示します。
したがって、お墓とは「お釈迦様のもとにいる故人、ご先祖様の成仏を祈る処」なのです。「お墓=ご先祖様」と思われている方が多いようですが、これは違います。
③お墓の形、刻む文字
②の意義から、下の写真のような「五輪塔」が、もっとも適切な墓石の形ということになります。
まず、写真の○で囲んだ5つの部分は、「五大」を表しています。この「五大」とは、仏教で全ての物質を構成する元とされた5つの要素のことで、下から「地、水、火、風、空」を示しています。
そして、この「五大」をも内在する「妙法蓮華経」の5字を、上からそれぞれに当てて、墓石に刻みます。「妙法蓮華経」は、この経文に説かれるところの「久遠実成本師釈迦牟尼仏(本尊たるお釈迦様)」と同一であることから、○で囲んだ部分を、即ち「お釈迦様」と捉えることができるのです。
また、このことから、上からそれぞれお釈迦様の「頭、顔、胸、腹、足」を表しているともいわれます。
したがって、「五輪塔」が②の意義をよく表現しているので、もっともふさわしい墓石と言えるのです。
ただ、この「五輪塔」は加工も難しく、高価であったことから、○の部分を一つの角柱の石に簡略化した「角柱墓」(下の写真参照)が一般的になっています。
形は違えども、その意義は変わりませんので、角柱石には「南無妙法蓮華経」や、同じ意味の「妙法」と「○○家先祖代々」「○○家之墓」etc.を刻みます。
高価という点では、墓石は安い物でも数十万円はします。用意出来ない場合は、代わりに「板塔婆」や「角塔婆」を建てても、お墓の意義は果たせますので、問題ありません。そもそも、一般庶民は墓石を建てていなかった時代には、仏教徒は「板塔婆」や「角塔婆」を建てていたと考えられます。
「板塔婆」 「角塔婆」
※1.以上からすると、「五輪塔」や「角柱墓」ではなくても、「妙法」etc.と刻んだ墓石ならばどのような形でも構わないとも言えますが、仏教的には、どちらかのお墓が適切だと思います。また、最近、霊園などで、好きな言葉などを刻んだ「お墓」を見かけることが増えましたが、以上の説明からも分かるように、これは仏教徒のお墓としてはふさわしくありません。
※2.上記の「五大~久遠実成本師釈迦牟尼仏」云々の説明は、もっと詳しい説明がないと難解だと思いますが、これ以上説明するとさらに複雑になっていきますので、このコラムではこれだけにしておきます。
とりあえずは、この「五輪塔」が「お釈迦様」を示しているということを分かって頂くだけで構いません。
④お墓の種類
お墓には、先祖墓(家墓)、夫婦墓(比翼墓)、個人墓、合祀墓などがあります。
先祖墓(家墓)は、その「家」を継いでいく方々が、入っていくお墓です。現在は、このお墓が一般的です。基本的には、長男家のお墓となり、分家の方は新しくお墓を建てることになります。
夫婦墓(比翼墓)は、夫婦二人だけのお墓です。墓石には、二人の法号(戒名)を刻みます。普通は、どちらかが亡くなったときに建て、残された方の法号も逆修(生前に法号を授与すること)してもらった上で、二人の法号を刻んでおきます。その際、残された方の法号には、朱色を塗っておきます。
個人墓は、一人の方のためだけに建てられるお墓です。先祖墓が一般化する明治中期頃までは、このお墓が主流でした。現在では、墓地不足とも相まって、特に功績があったなど、ごく限られた場合にしか建てられていません。
合祀墓は、家などに関係なく、誰もが入れるお墓です。大立寺の永代供養塔「霊山廟」も、この合祀墓の一つですが、将来的に無縁になられる方など、一定の条件を設けています。詳しくは、こちらをご覧下さい。
⑤お墓を建てる
新しくお墓を建てる場合、まず墓地が必要になります。墓地は、各墓地の管理者から買うのではなく、半永久的に借りるということに注意が必要です。墓地一区画の「永代使用料」を支払って、代々に渡って、その一区画を借り続ける権利「永代使用権」を得ることになります。なお、金銭的には、この他に、墓地の管理費を一年毎、もしくは一月毎に支払っていく必要があります。
墓地には、寺院が管理する寺院墓地の他、市町村などの自治体が管理する公営墓地、各種法人が独自で経営する民営墓地などがあります。
大立寺の供養墓地については、こちらをご覧下さい。
墓地が決まったら、墓石屋さん(○○石材店)に頼んで、墓石を建ててもらいます。墓石屋さんは、お寺から紹介することも出来ますが、知人におられる場合などは、その業者を使って頂いて構いません。なお、墓地によっては、提携している墓石屋さんしか使えない所もあるようですので、あらかじめ注意が必要です。
お墓のデザイン等に関しては、③の説明を踏まえて頂ければ、細かな部分(石の種類や花筒の形など)は、ご自由に決めて下さって構いません。
なお、④の夫婦墓の説明でも少し触れたように、生前に自らのお墓を建てておくことも出来ます。これを逆修墓と言います。
逆修墓は、寿墓とも呼ばれ、長生きできるとされています。この場合、法号も逆修してもらい、お墓に刻んで、朱色を塗っておくのが普通ですが、法号を逆修されずにお墓だけを先に建てておくことも可能です。夫婦墓に限らず、先祖墓などでも逆修墓として建てることが出来ます。
新たに建てる場合も、別の場所から移動してきた場合も、お墓を建てたときには、開眼法要を行います。お経を供養して、ただの石を「お墓」にする法要です。
逆に、たくさんの個人墓を先祖墓に整理するため処分したり、住んでいる近くにお墓を移動させたりと、墓石を動かすときには、閉眼法要を行います。
コラム「お仏壇について②」→「その他」→「開眼法要、閉眼法要」もご参照下さい。
⑥納骨
お墓の下にご遺骨を納めることを「納骨」と言います。
大立寺では、納骨の際は、「さらし(木綿)」の袋を用意してもらい、ご遺骨を骨壺からその袋に移し替えて納めます。これは、ご遺骨を土に触れさせる(さらしは朽ちていきます)ことで、土に、そして自然に還すためです。故人に自然と一体となって頂くことで、再び輪廻し、生まれ変わって頂くためとも言えます。
最近では、マンション型の、小さな個室を借りて、骨壺ごと納めておく「納骨堂」も流行っているようですが、私はあまりお勧めできません。やはり、土に還り、自然に還ることが、③お墓の意義という観点からも、本義であると考えるからです。
この点に関しては、「輪廻」や「成仏」、「仏子」などまた別のキーワードが絡んできますので、これ以上の説明は致しません。また別のコラムで取り上げたいと思います。
実務的なお話としては、納骨時には、「埋葬許可証」を墓地の管理者(寺院墓地の場合は住職)に渡す必要があります。「埋葬許可証」は、火葬場にて骨箱に、骨壺と一緒に入れてもらえますので、納骨の時まで、そのまま失わないように保管しておいて下さい。
また、お墓を別の墓地から移動させてくる場合には、「改葬許可証」を新しい墓地の管理者に渡す必要があります。詳しくは、旧墓地・新墓地の市区町村の衛生課にお尋ね下さい。
納骨は、四十九日忌(満中陰)以降に行います。四十九日忌の法要後に行われる所が多いようですが、大立寺では、百ヶ日忌の法要後に行う場合が多いように感じます。
一周忌、もしくは三回忌に併せて行う場合もあります。死別の悲しみの深いご遺族が、できるだけ長く、近くにご遺骨を置いておきたいと申し出られることがあるからですが、ご遺骨に対する執着を離れ、故人を土に還し、成仏させるため、遅くとも三回忌(丸2年後)には納骨するようにお願いしています。
なお、この三回忌という点に関しては、「逮夜」の説明が必要になってきますので、また別のコラムで取り上げたいと思います。
■終わりに
次のコラム「お墓について②」では、以上の説明も踏まえて、「⑦お墓の構成」と「⑧お墓参り」について説明していきます。
※お墓に関しても、宗派による違い、地域による違いが相当にあるようです。そのことも考慮して、ある程度一般性を持たせて書いたつもりですが、万一問題等ありましたら連絡して頂ければ幸いです。
※参考にさせていただいた本です。
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○日蓮宗について
○お坊さんの呼び方
○お線香のあげ方
○お数珠について①
○お数珠について②
○お数珠について③
○御札の祀り方
○金封(のし袋)について
○「祈り」について
○花の供養について
○お灯明について
○お経本のご紹介
○大立寺のお盆①
○大立寺のお盆②
○「お膳」について
○塔婆について
○木魚と木鉦
○お仏壇について①
○お仏壇について②
○お墓について①
○お墓について②
○布施について
○お経とは
○インド仏跡参拝紀行文(1)
○インド仏跡参拝紀行文(2)
○インド仏跡参拝紀行文(3)
○インド仏跡参拝紀行文(4)
○インド仏跡参拝紀行文(5)
○インド仏跡参拝紀行文(6)
○インド仏跡参拝紀行文(7)
○インド仏跡参拝紀行文(8)
○インド仏跡参拝紀行文(9)
○インド仏跡参拝の旅
まとめ動画
○東日本大震災第三回忌に臨んで(前編)
○東日本大震災第三回忌に臨んで(後編)
長唱山大立寺(だいりゅうじ)
〒607-8008 京都市山科区安朱東海道町56 詳しくはこちら