平成22年度12月作成(毎月1個更新目標!!)
○お数珠について③
○はじめに
今回のコラムでは、日蓮宗以外のお数珠の持ち方について簡単に説明していきます。
ご紹介する宗派は、天台宗・真言宗・浄土宗・浄土真宗・禅宗です。それぞれ、お数珠の特徴と持ち方について説明していきます。
なお、「お数珠について①、②」をまだ読まれていない方は、まずはそちらからお読みになって下さい。また、もっと詳しくお知りになりたい方は、お手数ですが、各宗派の御寺院に直接お尋ね下さい。
※写真をクリックすると拡大された画像をご覧になれます。
○天台宗
・特徴
母珠は1つだけ。写真のように丸い珠(四天)と平珠で輪になっている。母珠から出ている房も、丸い珠の房と平珠の房から成る。
・持ち方
合掌する時は、人差し指と中指の間にかけ、そのまま合掌する。母珠は下にし、房を下に垂らす。
手に掛ける時は、左手の親指と四指の間に2重(2輪)にして掛ける。母珠は上にして親指で押さえるようにする。房は外側に垂らす。
○真言宗
・特徴
母珠は2つあり、少し小さな珠で四天がある。房が2つの母珠からそれぞれ2本ずつ出ている。外観上の日蓮宗の数珠との違いは、房の本数だけ(日蓮宗は一方が3本。厳密に言うと、もう一方の2本の方の房に付いている珠の数も違う。)。
・持ち方
合掌する時は、四天のある方の母珠を右手の中指に掛け、もう片方の母珠を左手の中指に掛け、そのまま合掌する。日蓮宗のように一度ひねったりはしない。房は、他人のための行の時は外側に垂らし、自分のための行の時は内側に垂らす。
手に掛ける時は、左手の親指と四指の間に2重(2輪)にして掛ける。2つの母珠はそろえて上にして親指で押さえるようにする。房は内側に垂らす。
※真言宗は、他宗に比べても特に、流派や師匠によって様々な持ち方があるようですので一例とお考え下さい。
○浄土宗
・特徴
僧侶が儀式に用いる荘厳数珠、たくさんで唱える時に用いる百万遍数珠、念仏を数える時に用いる日課数珠など数種類の数珠がある。一般に、日々念仏を唱える時には、日課数珠が用いられる。上の写真は日課数珠。27個と40個の珠から成る2つの輪が繋がっている。房は40個の方に金属の輪に繋がれて2本出ている。
・持ち方
合掌する時は、2重(2輪)にして、合掌した両手の親指に掛ける。2つの母珠はそろえて上にし親指で押さえるようにする。房は下にし手前(体の方)に垂らす。母珠を上にし房を下にできるのは、その他の数珠とは違い、房が母珠から出ているのではないため。
念仏を唱え数珠を繰る時は、27個の方を親指と四指の間に掛け、40個の方を人差し指と中指の間に掛ける。唱えながら27個の方を親指で手前に繰っていく。
普段は、2重(2輪)にして左手首に掛ける。
○浄土真宗
・特徴
「2重(2輪)にして使う長い数珠」と「1つの輪だけの短い数珠」がある。浄土真宗として2種類用いられている。慣習的にどちらが本願寺派(西)、真宗大谷派(東)などと言われているが、派による使い分けはしない。
長い方の数珠は女性のみが用いる。母珠は2つあり、少し小さな珠で四天がある。房が2つの母珠からそれぞれ2本ずつ出ている。しかし、念仏を唱えることを行とは考えないため数取りをしないので、四天の無い方の母珠から出る房には珠を付けず、紐を結んだだけになっている。これを「蓮如結び」という。
短い方の数珠は男女共に用いる。母珠は1つだけ。そこから房ではなく紐が出ている。1つの輪と2本の紐が出ている。正確には、2つの輪のうち、一方の輪が切られている。
・持ち方
合掌する時。短い方の数珠の場合は、本願寺派(西)でも真宗大谷派(東)でも、合掌した両手の四指の方に掛ける。母珠を下にし、房を外側(体でない方)の下に垂らす(cf.浄土宗)。本願寺派(西)は長い方の数珠の場合でも、2重(2輪)にした後、短い方と同じように掛ける。
真宗大谷派(東)は、長い方の数珠の場合、2重(2輪)にした後、合掌した両手の四指の方に掛けるところまでは同じだが、2つの母珠は下にせず、そろえて上にし親指で押さえるようにする。房は自分から見て左側に全て垂らす。
手に掛ける時は、左手の親指と四指の間に掛ける(長い方の数珠は2重(2輪)にして)。母珠は下にして、房も下に垂らす。
○禅宗
曹洞宗の数珠の一例
臨済宗の数珠の一例
・特徴
曹洞宗、臨済宗ともに、母珠は2つあり(臨済宗には1つだけの物もある)、少し小さな珠で四天がある。房または紐が母珠の1つからだけ出ている(写真とは逆に、曹洞宗で紐の数珠、臨済宗で房の数珠がある)。紐の場合は、浄土真宗の短い方の数珠と同じように、1つの輪と2本の紐が出ている。正確には、2つの輪のうち、一方の輪が切られている。
曹洞宗と臨済宗の数珠の違いは、曹洞宗の数珠にだけ金属の小さな輪が入っているということ。これには色々と謂われがあるようだが、実際には曹洞宗と臨済宗の数珠を区別するだけの物のようである。
・持ち方
合掌する時は、2重(2輪)にして左手の親指と四指の間に掛ける。母珠は下にして、房も下に垂らす。日蓮宗の数珠の普通の持ち方と同じ。
手に掛ける時も、同様に2重(2輪)にして左手の親指と四指の間に掛ける。母珠は下にし、房も下に垂らす。
○各宗に使える数珠
宗派を問わず使えるお数珠をお持ちの方を最近ではよく見かけます。日蓮宗以外では、あまり宗派ごとのお数珠を持つように指導されていないようです。
日蓮宗の檀信徒の方は、「お数珠について①、②」をご理解頂いた上で、出来るだけ日蓮宗用のお数珠をお持ちになって頂きたいと思います。
※それぞれの宗派のお数珠をお持ちの方は、別の宗派のお葬式や法事に出席される時も、出席される宗派に合わせてお数珠を持ち替える必要はなく、ご自分でお持ちのお数珠をお使い頂いて問題ありません。
"正式"な数珠
略式の数珠
・特徴
"正式"な(珠が108個から成る)数珠は、真言宗で用いられる数珠と同じ構成。母珠が2つあり、少し小さな珠で四天がある。房が2つの母珠からそれぞれ2本ずつ出ている。
略式の数珠は、108個の約数の27個や18個の珠から成る。浄土真宗用の短い方の数珠に似ているが、母珠からは紐ではなく房やぼんぼりが出ている。最近では、珠の数にこだわらない、扱いやすい大きさの数珠が作られている。
・持ち方
"正式"の数珠も略式の数珠も、一般には(私が見てきた限りでは)、浄土宗や浄土真宗のように合掌した両手に掛ける方が多いように思われる。左手に掛けて合掌する方も時折見受けられるが、「お数珠について②」で説明したように、「清浄具」という観点から、このような各宗に使える数珠を持つ時も左手に掛けるべきだと個人的には考える。
○まとめ
以上、他宗のお数珠の説明ということもあって、主に外観上の特徴や持ち方といった"形式"にスポットを当てて説明してきましたが、"形式"にとらわれすぎることはあまり良いことではありません。ここまで説明してから言うのも何ですが、"心持ち"がそなわってこその"形式"です。"形"が無ければ"心"はそなわりにくいものですが、"形"にとらわれすぎて"心"を失ってしまえば何の意味もありません。各宗説明してきましたが、あくまで参考程度にご覧下さい。「お数珠について①、②」に説明しましたように、「お数珠とは何か」ということを頭に置いて、「お数珠を扱う心持ち」をまず第一に大切にして頂きと思います。
(注1)一応調べて書いておりますが、万一問題等ありましたら連絡して頂ければ幸いです。
(注2)今回は、大きな宗派で書いております。各宗派とも、さらなる分派や、地方や伝統によって、今回紹介したのとは違った"形式"で扱われていることも多々あると思います。この点からも参考程度にご覧下さい。
(注3)持ち方についての写真を今回はご用意できませんでした。写真かイラストを後々UPできればと思っております。あしからず…。
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今回の撮影には、ご近所の「仏法堂」様に御協力して頂きました。
この場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。
ぶつだんの 仏法堂
〒607-8074
京都市山科区音羽乙出町1-14
電話:075-594-6781
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※参考にさせていただいた本です。
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○日蓮宗について
○お坊さんの呼び方
○お線香のあげ方
○お数珠について①
○お数珠について②
○お数珠について③
○御札の祀り方
○金封(のし袋)について
○「祈り」について
○花の供養について
○お灯明について
○お経本のご紹介
○大立寺のお盆①
○大立寺のお盆②
○「お膳」について
○塔婆について
○木魚と木鉦
○お仏壇について①
○お仏壇について②
○お墓について①
○お墓について②
○布施について
○お経とは
○インド仏跡参拝紀行文(1)
○インド仏跡参拝紀行文(2)
○インド仏跡参拝紀行文(3)
○インド仏跡参拝紀行文(4)
○インド仏跡参拝紀行文(5)
○インド仏跡参拝紀行文(6)
○インド仏跡参拝紀行文(7)
○インド仏跡参拝紀行文(8)
○インド仏跡参拝紀行文(9)
○インド仏跡参拝の旅
まとめ動画
○東日本大震災第三回忌に臨んで(前編)
○東日本大震災第三回忌に臨んで(後編)
長唱山大立寺(だいりゅうじ)
〒607-8008 京都市山科区安朱東海道町56 詳しくはこちら