平成23年度8月作成(毎月1個更新目標!!)
○大立寺のお盆②
■はじめに
今月号も先月号に引き続き、お盆についてのコラムです。
「大立寺のお盆①」をまだお読みになっていない方は、まずそちらからお読みになることをお勧め致します。
今月号は、主に精霊棚の祀り方やお盛り物、御仏膳について説明していきます。
※精霊棚とは、お盆の期間中、お家に帰ってこられたご先祖様をお祀りする棚のことです。
■祀り方(以下の画像参照)
1)まず、お仏壇を掃除してから、その前に真菰(まこも)のゴザを敷いた精霊棚を置きます。
精霊棚として使う台は、縦50cm×幅80cm、高さ30cmくらいの机であれば充分だと思います。
中陰中に用いていた白木の台(葬儀後四十九日忌まで、亡くなられた方をお家で祀る時に用いていた台)や、大きな段ボール箱に白布をかけた物で代用されているお家もあります。
大立寺では、初盆(亡くなられて四十九日(満中陰)を迎えた後、初めて迎えるお盆)のお家には、先祖代々用の精霊棚と初盆の方だけ用の精霊棚を1つずつ合計2つ用意してもらうようにお願いしています。それぞれの前で、棚経をあげさせて頂いております。
2)精霊棚に置く物
◇三具足(みつぐそく)
お花(しきび等)、お灯明(ロウソク)、お線香を置きます。上の図のように、精霊棚の前に置く経机に並べても構いません。置き方は、別コラムを参照して下さい。
◇水塔婆
お寺にお迎えに来て頂いたときに持って帰って頂く水塔婆のことです。精霊棚ではなくお仏壇に立てて頂いても構いません。
初盆の方は、初盆の方の法名だけを書いた水塔婆も持って帰って頂きますので、初盆の方用の精霊棚の上に立ててお供えして下さい。
下の図のような水塔婆立てがあれば理想的ですが、立てかけられる物であれば大体どのような物でも構いません。
◇灑水(しゃすい)用の器
灑水供養(水塔婆に水をかけて供養すること。中には、水塔婆ごと器に入れておかれるお家もあります。)のために、水を入れて蓮の葉を浮かべた容器にマキ(下の写真参照)を添えておきます。下記の「灑水盤」と似た物ですが、私の住んでいる地域では、「水の子」というよりも「水塔婆」に水をかけて供養するために用意されています。
◇位牌、写真、提灯
初盆の方用の精霊棚には、お位牌を置きます。
写真は、上に飾ってあるのをわざわざ外してまでは置かなくてもよいですが、小さな写真があれば置いてあげても良いかと思います。
逮夜中、四十九日忌までの間灯しておく提灯をお持ちでしたら、灯してあげて下さい。
◇その他
・「水の子」
キュウリやナスを賽(さい)の目に刻んで、洗った米と混ぜ合わせ、蓮の葉の入った器に盛りつけた物を「水の子」といいます。これは、「餓鬼」に対する施しとして行われています。元々、お盆には『供養を受けられず、「逆さ吊り」にされて苦しめられている亡くなった霊を救うための仏事』という側面があったことからの慣習だと思われます。
「水の子」とは別に、水を入れて蓮の葉を浮かべた容器(灑水盤(しゃすいばん)と呼びます)を用意しておきます。「水の子」は百八の煩悩を表していると云われ、灑水盤の中の水を溝萩(みそはぎ)に含ませて「水の子」に注ぐことで、煩悩が鎮まると云われています。
なお、私の住んでいる地域では、これを用意されているお家を見かけたことはありません。
・「小さなはしご」
「餓鬼」への施しということでは、精霊棚に地べたから小さなはしごを掛けたりもします。これは、餓鬼界に堕ちた者は、地の下にいて、はしごが無いと精霊棚の施しを受けられないと考えられてのことだそうです。実際には見たことがありませんが、「おがら」を使って上手に作成されるようです。
3)お供え物について
以上を用意して頂いた上で、次に以下の物をお供えします。このお供え物は、ご先祖様に対して「おもてなし」の心を持って、お供えして頂くことが一番大事なことですので、その心を込めたお供え物であれば、量や質、種類はどのようであってもあまり問題ありません。
◇お盛り物
お盛り物とは、野菜や果物を大きな蓮の葉の上に乗せて綺麗に盛った物のことです。
蓮の葉がなければ、半紙を敷いたお盆などに乗せて頂いても構いません。
蓮の葉は、8月10日前後頃から花屋さんやスーパーなどで販売されます。
最近では、お盛り物用の色々な野菜や果物をパックにした物もスーパーなどで販売されるようになりました。ただし、このようなパックで購入された場合でも、覆われているラップは外してお供えして下さい。
野菜や果物の種類は、特に決まっておりませんが、夏の旬の野菜や果物をお供えして頂ければ結構です。
ちなみに、よく見かけるのは「ナス、キュウリ、トウモロコシ、インゲン豆、カボチャ」、「ブドウ、スイカ、メロン、バナナ、オレンジ」などです。
◇ほおずき
お盛り物のパックの中には、ほおずきが入っている物がありますが、ほおずきは元々一番初めの図ように、精霊棚の両端に笹竹を立てて、その間に張られた縄に吊す形で、お供えしていました。
これは、「お明かり」が高価であった時代に、ほおずき(鬼灯)の形が提灯に似ていることから、飾られるようになったようです。
現在では、あまり笹竹まで立てて精霊棚を作られるお家は見かけなくなりました。「明かりを灯す」という気持ちで、お供え物の一つとして、ほおずきを1つ、2つお供えすればよいと思います。
※なお、笹竹の間に縄を張るのは、ご先祖様が帰ってこられる結界を作るためだそうです。
◇お盛り物以外
ジュースなどの飲み物類、菓子類(おひがし、子供の食べるような駄菓子でも可)、乾物をお供えします。
◇キュウリの馬、ナスの牛
下の図のように、キュウリで馬を作ったり、ナスで牛を作ったりされるお家もあります。キュウリの馬はご先祖様に少しでも早くお家に帰って来て頂くために、ナスの牛はゆっくりとお戻り頂くために作ります。
足には「おがら」を用います。最近では、これを模した人形も販売されているようです。
4)御仏膳
御仏膳は、仏さま、ご先祖様にお供えするお食事です。大きな器に盛ったご飯とお茶、お水だけでも構いませんが、以下に参考として献立例を掲載しておきますので、出来る範囲で構いませんのでお供えしてあげて下さい。
献立例は色々な資料から抜粋してあります。結局、どれが正しいとか誤っているとかはないようです。ご先祖様が喜ばれると思う物をお供えして下さい。
①日蓮宗のお寺から頂いた古い献立例(1日1食)
『・十二日
おちつき団子、七七いろ(七色?)、お茶とう(お砂糖?)、
ささぎ(赤い豆…小豆より大)、にぼし
・十三日
おにしめ(丸山ふ、ぜんまい、小芋、ゆり根、隠元豆、ゆば、
高野豆腐)、にゅう麺(丸山ふ、椎茸、ゆば、奈良漬)、
ゆり根白煮、お茶とう、果物
・十四日
のっ平(丸山ふ、小芋、干ぴょう、椎茸、ごんぼ)、かぼちゃ煮、
漬け物(あさうり、茄子)、お八つ(干ざらし、お茶とう、果物)
・十五日
土産団子、はすのおこわ、あらめ揚げ豆腐煮(白胡麻)、奈良漬、
お茶とう
これは一例に過ぎない。この他、何でもめずらしい物を供えれば
よい。』
※何を指しているのか分からない料理があります。
※15日でご先祖様をお送りする地域の献立例です。
②1日3食の献立例
『・十三日夕食…お迎え団子、お水
・十四日朝食…おかゆ、みそ汁、香の物
昼食…おはぎ、すもみ(うり、ふ)
夕食…そうめん、なすの味噌あえ
・十五日朝食…茶めし、なす焼き
昼食…煮掛けそうめん(しいたけ、にんじん、さといも、
おあげ、ささぎ)
夕食…ごはん、煮しめ(しいたけ、にんじん、さといも、
おあげ、ごぼう)
・十六日朝食…送り団子、菜の塩もみ』
※13日からの献立ですので、日蓮宗のというわけではありません
が、お盆の期間として最も一般的なケースでの献立例です。
私たちがご飯を頂くのと同じように、ご先祖様にも召し上がって
頂くという気持ちで3食用意する献立例です。
③簡単な献立例(1日1料理)
『・十三日…お迎え団子(あんこのついたお団子)
・十四日…おはぎ
・十五日…そうめん
・十六日…送り団子(白い団子)』
※②が理想的ですが、なかなか3食とも用意するのは大変だと思いま
す。大変だからしないというよりは、このような簡単な御仏膳でも
構いませんので、出来る範囲で、心を込めてお供えしてあげて
下さい。
■お盛り物の処分の仕方
夏の暑い時に、生ものをお供えしますので、どうしても野菜や果物は傷んでしまいます。本来ですと、お供えした物は、お下がりとして、頂くのが一番よいのですが、傷んでしまった物は、お腹を壊しますので、どうしても処分することになります。
昔は、川施餓鬼といって、送り火と並んで、川に灯籠を流してご先祖様をお送りするということをしていました。私の住んでいる地域でも、近所の疏水で、灯籠流しをし、それと一緒に、お盛り物も流していたそうです。
しかし、現在では、一部の地域を除いて、川に物を流すことが禁止されたため出来なくなっています。
そこで、最近では、予め指定された近所のお寺や町内の回収場所に持っていくようになっています。指定の場所には、回収ボックスが用意されているので、そこにお盛り物を収めることになります。地域にもよりますが、16日の朝に設置されます。
持っていくときは、新聞紙か何かに丁寧にくるんで持っていって下さい。
回収場所が見つからない場合は、普通のゴミと同じ場所でも構いませんが、その場合でも、新聞紙か何かに丁寧にくるんで、他のゴミとは別の袋に入れて処分して下さい。
<< 注 意 >>
※お供え物や御仏膳は一例です。また、地域によって様々な慣習が
あると思います。基本的には、その家その家に代々伝わってきた
方法に従って下さい。今回のコラムも参考程度にご覧下さい。
※全てを用意しなければいけないというものではありません。気持ち
を込めてこれはできそうだ、これはしてあげたいと思われる事をし
てあげれば、ご先祖様もきっとお喜びになられると思います。
※参考にさせていただいた本です。
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○日蓮宗について
○お坊さんの呼び方
○お線香のあげ方
○お数珠について①
○お数珠について②
○お数珠について③
○御札の祀り方
○金封(のし袋)について
○「祈り」について
○花の供養について
○お灯明について
○お経本のご紹介
○大立寺のお盆①
○大立寺のお盆②
○「お膳」について
○塔婆について
○木魚と木鉦
○お仏壇について①
○お仏壇について②
○お墓について①
○お墓について②
○布施について
○お経とは
○インド仏跡参拝紀行文(1)
○インド仏跡参拝紀行文(2)
○インド仏跡参拝紀行文(3)
○インド仏跡参拝紀行文(4)
○インド仏跡参拝紀行文(5)
○インド仏跡参拝紀行文(6)
○インド仏跡参拝紀行文(7)
○インド仏跡参拝紀行文(8)
○インド仏跡参拝紀行文(9)
○インド仏跡参拝の旅
まとめ動画
○東日本大震災第三回忌に臨んで(前編)
○東日本大震災第三回忌に臨んで(後編)
長唱山大立寺(だいりゅうじ)
〒607-8008 京都市山科区安朱東海道町56 詳しくはこちら