平成22年8月作成(毎月1個作成目標!!)
◯お坊さんの呼び方
■はじめに
記念すべき第一回目のコラムは、私自身疑問に思っていましたお坊さんの呼び方を取り上げてみたいと思います。
①「住職」(じゅうしょく)または「住持」(じゅうじ)
これは「一寺の長であるお坊さん」を指します。したがって、お坊さんが一人だけおられるお寺では、必ずその方が「住職」となりますので、その方を「○○住職」と呼んで頂ければ結構です。
これは宗派を問わず呼んで頂いて構いませんが、たくさんお坊さんが働いているようなお寺では、その中の長だけが「住職」ですので、その他のお坊さんは「住職」と呼んではいけません。
宗教法人法上は「代表役員」のことで、会社法上の「代表取締役」を一般には「社長」と呼んでいるのと同じようなニュアンスです。
なお、「住職」はあくまで役職名のようなものですので、以下の敬称を用いて頂く方がよいと思います。
cf.各宗本山(ほんざん:一般の寺院よりも大きなお寺、詳しくは別コラムで説明します)の「住職」を「貫首(または貫主)」(かんじゅ)と呼び、このような高僧に対しては、以下の②~④とは別に「猊下」(げいか)という敬称を用います。例:「本山○○寺貫首 ○○○○猊下」、呼ぶときは「貫首さま」「○○猊下」など。
②「上人」(しょうにん)
この呼び方は、日蓮宗や浄土宗・浄土真宗で用いられます。
ただし、宗祖の「日蓮聖人」や「法然聖人」・「親鸞聖人」などは、「聖人」の字を使います。
日蓮宗では、「日蓮聖人」のみ「聖人」の字を用い、その他のお坊さんに対しては、たとえ日像上人(京都に日蓮宗を弘められた高僧)のような方に対しても、「上人」を用います。
③「和尚」
この呼び方は、曹洞宗・臨済宗・浄土宗・天台宗・真言宗で用いられます。
ただし、読み方が宗派によって異なります。曹洞宗・臨済宗・浄土宗は「おしょう」と呼び、天台宗では「かしょう」、真言宗では「わじょう」と呼ばれます。
また、「おしょう」に「さん」を付けて「おしょうさん」と呼ぶこともあり、これがなまって「おっさん」とも呼ばれます。この「おっさん」は特殊なイントネーションで、「おじさん」を指す「おっさん」とは違うイントネーションです。言葉では説明しにくいですが、「おっ」を上げて、「さん」を下げて呼びます。
なお、「おっさん」に関しては宗派による違いと言うよりは、地域による違いの方が強いようで、少なくとも私の住む山科では、日蓮宗のお坊さんである私も「おっさん」と呼ばれることがしばしばあります。(②の「お上人さん」がなまっての「おっさん」であるならば自然なことになりますが、どちらがなまったかははっきりしていません。)
④「その他」
日蓮宗では、親子でお坊さんをされているような場合、お父さんを「御前さま」、子供を「若上人」と呼ぶことがあります。親子関係に関わらず、単に年配のお坊さんを呼ぶときに「御前さま」を使うこともあります。また、これは呼び方ではありませんが、修行を終えたお坊さんを「教師」(きょうし)、修行中のお坊さんを「沙弥」(しゃみ)といいます。
浄土真宗では「御院さん」(ごいんさん)も使われます。
曹洞宗・臨済宗では、「和尚」(おしょう)の他に、「方丈」(ほうじょう)や「堂頭」(どうちょう)も使われます。さらに、曹洞宗・臨済宗の修行中のお坊さんは「雲水」(うんすい)と呼ばれます。
各宗派共通で「先生」も使われます。(「先生」には「指導的立場にある人に対する敬称」という意味がありますので用いられているのですが、個人的にこの呼び方はあまり好きではありません。「どの宗派のお坊さんに対しても使える敬称」というところが、「どの宗派のお坊さんも同じだろう」と思われている気がするからです。)
■まとめ
以上、つらつらと説明してきましたが、最後に日蓮宗のお坊さんを呼ぶときのまとめをしておきます。
(ⅰ)「ご住職」、「ご住職さん」
(ⅱ)「○○上人」、「お上人さん」
(ⅲ)「おっさん」
この(ⅰ)~(ⅲ)であればどれで呼んで頂いてもよいと思います。
(注1)手紙などの敬称で「○○上人様」と書くのは、敬称が二重になりますのであまりよろしくありません。
しかし、呼ぶときは、通例化していることもあり、京都ではよく何でも「さん」(cf.おいもさん、おまめさん)を付けますので(ⅱ)のように呼んで頂いて構いません。
(注2)一応調べて書いておりますが、万一問題等ありましたら連絡して頂ければ幸いです。
※参考にさせていただいた本です。
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○日蓮宗について
○お坊さんの呼び方
○お線香のあげ方
○お数珠について①
○お数珠について②
○お数珠について③
○御札の祀り方
○金封(のし袋)について
○「祈り」について
○花の供養について
○お灯明について
○お経本のご紹介
○大立寺のお盆①
○大立寺のお盆②
○「お膳」について
○塔婆について
○木魚と木鉦
○お仏壇について①
○お仏壇について②
○お墓について①
○お墓について②
○布施について
○お経とは
○インド仏跡参拝紀行文(1)
○インド仏跡参拝紀行文(2)
○インド仏跡参拝紀行文(3)
○インド仏跡参拝紀行文(4)
○インド仏跡参拝紀行文(5)
○インド仏跡参拝紀行文(6)
○インド仏跡参拝紀行文(7)
○インド仏跡参拝紀行文(8)
○インド仏跡参拝紀行文(9)
○インド仏跡参拝の旅
まとめ動画
○東日本大震災第三回忌に臨んで(前編)
○東日本大震災第三回忌に臨んで(後編)
長唱山大立寺(だいりゅうじ)
〒607-8008 京都市山科区安朱東海道町56 詳しくはこちら