平成23年度5月作成(毎月1個更新目標!!)
○お灯明について
■はじめに
先月のコラムに引き続き、今月は三具足(みつぐそく)の最後の一つ、「お灯明(とうみょう)」について説明します。
三具足の並べ方についても最後に説明します。
■お灯明とは
まず、そもそもお灯明とは、ロウソクなどで灯した明かりのことをいいます。
このお灯明は、仏さまに捧げる供養の一つで、その明かりは「心気を厳粛ならしむ、戒心を資く」すなわち「供養する私たちの心を引き締め、仏さまの教えを守ろうとする気持ちを助ける」働きがあるとされています。
また、お灯明の明かりは、仏さまの慈悲と智慧を象徴するものとされています。お灯明の明かりが闇をはらい周りを明るく照らし出すように、仏さまの慈悲と智慧の光は、私たちの心の闇すなわち煩悩(無明ともいう)を照らし出しその全てを取り除くとされているからです。
さらに、お灯明は、自らを燃やすことで、周りを照らし出します。自分の身を削って他人のために施す。「祈りについて」のコラムで少し触れた「菩薩行」、私たちが目指すべき生き方、「忘己利他」の行を常々私たちに示してくれています。
■貧者の一灯
お灯明だけではなく、お線香やお花など、様々な供養をするときの大切な心構えについて、お灯明にまつわる古いインドのお話が残っています。それが「貧者の一灯」です。
お釈迦さまが初めて祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)に来られた時のお話です。
村では、お釈迦さまに対するお供養として、たくさんの明かりを灯してお釈迦さまをお迎えすることにしました。
千灯、万灯と自分の権威を示すためにたくさんの供養をするお金持ちがいる中、貧しくてその明かりを一つも買うことができない老婆がいました。しかし、老婆は、「今まで何の供養もさせてもらえなかった。せめて一灯だけでも何とか供養させてもらいたい」と思い、悩んだ末、自分の髪の毛を売り、わずかな油を買って供養することにしました。老婆は、その油で灯した一灯を、たくさんのお灯明が供養されている中に大事にそっと置きました。
さて、夜になって、お釈迦さまがお見えになりました。すると突然、ビューと風が吹き、次々とお灯明が消えてしまいました。しかし、ただ一つのお灯明だけが、消えずに力強く辺りを照らし続けていました。それは、貧しい老婆が捧げたたった一つのお灯明だったのです。そのおかげで、お釈迦さまは無事に村にお着きになったと言われています。
お釈迦さまは、「どんなたくさんの灯でも、供養の真心が薄いものは微風にも消える。たとえ小さな貧しい灯でも、真心の厚きものは大風にも消えない。」と仰り、真心のこもった供養の大切さを説かれました。
お灯明やお線香、お花、どのような供養でも、心のこもっていない見栄を張っただけのたくさんの供養よりも、わずかでも真心のこもった供養の方が尊いということです。
普段、何気なく火を着けているだけのお灯明。これからは、その意味を知り、真心を込めて灯して頂きたいと思います。
■注意点
お灯明を消すときは、お線香の時と同じように、「息」を吹きかけて消してはいけません。人の「息」で、仏さまを汚(けが)してしまうからです。手や扇(うちわなど)を用いて消すようにしましょう。一説には、それらであおぐことすらダメで、お灯明の芯を箸などでつまんで消すべきだといわれることもあります。
最近では、電気で灯す物も売られています。電気で灯すと「菩薩行(自らを燃やす云々)」の意味が失われてしまいますが、「心の闇を照らす」という点ではその意味をなすとも考えられ、また最近では一人暮らしのお年寄りの方も多いことから火の元の安心という点から考えて、私は電気のお灯明も使って頂いて構わないと思っています。
■三具足の置き方
これで三具足(お線香を立てる香炉、花を入れる花立て、お灯明を灯す燭台)の説明が全て終わりました。「花の供養について」のところで説明しましたように、並べ方は、お仏壇に向かって、左に花立て、中央に香炉、右に燭台です。今回は最後になぜそのように置くかを説明しておきます。
まず、日本や中国では、古来より左を上位、右を下位としてきました。
ex.右大臣より左大臣の方が上位
cf.清浄か不浄かでは、右=清浄、左=不浄(数珠のコラム参照)
次に、左右の判断は、お仏壇に向かってするのではなく、仏さまから見て行います。したがって、お仏壇に向かって言うと、右(仏さまから見ると左)が上位、左(仏さまから見ると右)が下位となります。
そして、香炉が中央なのは決まっているのですが、お花かお灯明のどちらが上位かと言いますと、手を加えた物がそうでない物より上位となりますので、お仏壇に向かって、右にお灯明、左にお花ということになります。
cf.お菓子や果物をお供えするときも、お菓子(手を加えた物)>果物(手を加えてない物)となりますので、お仏壇に向かって、右にお菓子、左に果物となります。
お寺の本堂などでは、花立てと燭台が1対ずつあって5個の物が並べられていることがありますが、これを「五具足(ごぐそく)」といいます。五具足では、中央から上位になりますので、中央から香炉→燭台→花立ての順で置きます。
(注)一応調べて書いておりますが、万一問題等ありましたら連絡して頂ければ幸いです。
※参考にさせていただいた本です。
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○日蓮宗について
○お坊さんの呼び方
○お線香のあげ方
○お数珠について①
○お数珠について②
○お数珠について③
○御札の祀り方
○金封(のし袋)について
○「祈り」について
○花の供養について
○お灯明について
○お経本のご紹介
○大立寺のお盆①
○大立寺のお盆②
○「お膳」について
○塔婆について
○木魚と木鉦
○お仏壇について①
○お仏壇について②
○お墓について①
○お墓について②
○布施について
○お経とは
○インド仏跡参拝紀行文(1)
○インド仏跡参拝紀行文(2)
○インド仏跡参拝紀行文(3)
○インド仏跡参拝紀行文(4)
○インド仏跡参拝紀行文(5)
○インド仏跡参拝紀行文(6)
○インド仏跡参拝紀行文(7)
○インド仏跡参拝紀行文(8)
○インド仏跡参拝紀行文(9)
○インド仏跡参拝の旅
まとめ動画
○東日本大震災第三回忌に臨んで(前編)
○東日本大震災第三回忌に臨んで(後編)
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〒607-8008 京都市山科区安朱東海道町56 詳しくはこちら